東京高等裁判所 昭和26(う)5985 高裁判例
主 文
原判決を破棄する。
被告人は無罪。
理 由
本件控訴の趣意は弁護人関谷信夫同渡辺泰敏(連名)名義の控訴趣意書に記載さ
れたとおりであるからここにこれを引用しこれに対し次のように判断する。
第一点について。
所論の検証調書に見取図五葉が添附され、調書と一体をなしていること、原審第
三回公判調書には、右検証調書の証拠調として、「右書類を朗読し」と記載されて
いるのみで、添附見取図についてはこれを示した旨の記載がないことは所論のとお
りである。而して検証調書に図画が添附され、調書と一体をなしている場合に右検
証調書の証拠調をするに当つては右検証調書の記載を読み聞かせただけではその内
容の全部又は一部を了解し難いときは、これに応じて添附の図面を展示すべきこと
は当然の措置であるが、添附の図画を示さなくと<要旨>も、検証調書の朗読のみで
その記載内容を了解することができる場合には必ずしも添附図面を併せて示さな
け</要旨>れば検証調書の証拠調手続が違法であると断ずることはできない。本件の
如く被告人並に弁護人が検証に立会つた場合において当該検証調書の証拠調に際
し、証拠調終了後裁判官が訴訟関係人に意見を求めたのに対し弁護人は争わない旨
を述べ、何等異議を止めた跡がない(このことは右第三回公判調書の記載に徴し明
めである)以上、訴訟関係人は特に右図面を示されなくとも検証調書の朗読のみに
よつてその内容を了解したものと認めちれるから、右添附図面を示さなかつたから
といつて直ちに本件検証調書の証拠調手続が適法に行われなかつたというとこはで
きない。従つて原審の証拠手続には所論のような違法はないと認むべく、又右検証
調書を罪証に供した原審判決は所論のような採証の法則に違反したものとはいえな
いから論旨は理由がない。
(その他の判決理由は省略する。)
(裁判長判事 谷中董 判事 荒川省三 判事 堀義次)